ささやかな話

好きなもののことばかり書こうと思います

伊勢のおじさんの赤福

今週のお題「あんこ」

 

職場で旅行のおみやげの話をしていたとき、「関西方面に行ったら赤福を買って帰る」と言う人がいた。

 

赤福は思い出の味だ。

子どもの頃、三重県伊勢市に住んでいた親戚のおじさんが、関東に来るときにいつも持ってきてくれたのだ。

 

おじさんは祖父の弟なので、正確には「おおおじさん」ということになるらしいが、父や母が「伊勢のおじさん」と呼んでいたので、自分もそう呼んでいた。

 

やわらかい方言で話すこのおじさんが好きだったし、赤福もおいしかったので、いつも来るのを楽しみにしていた。

 

ただし赤福の難しいところは、賞味期限が2〜3日と短く、かつ小分けがしにくいところだ。

 

おじさんはいつも20個くらい入った大きい箱を持ってきてくれるのだが、我が家は3人家族で、父も母もせいぜい2〜3個ずつしか食べないので、残りはすべて自分が担当することになる。

 

いくら赤福がおいしくて自分が育ち盛りだといっても、そんなに一気に食べられるものではない。

 

しかし、ご近所や友だちにお裾分けしようと思っても、餅がやわらかく整然と敷き詰められているので、あの独特のヘラを使って頑張ってみても、どうしてもエレガントに分けられない。

 

結局いつも、毎食後のデザートを赤福にして乗り切っていたような気がする。

 

自分が中学生のときに祖父が亡くなってからは、おじさんも関東に来ることがほとんどなくなってしまった。

赤福はおそらくそれ以来食べていない。

 

いつだったか、おじさんと母が電話をしていたときに自分の話になり、母が「あの子はいま寄席に行っているんですよ」と伝えたら、羨ましそうに「いいなあ」と言っていたそうだ。

おじさんと好きな落語家の話なんかもしてみたかったなと思うけれど、そんな機会もないまま、ずいぶん前に亡くなってしまった。

 

先日横浜に出かけたとき、ちょうど赤福の出張販売があるのを知り、懐かしくなって行ってみた。

 

残念ながら赤福はもう完売していたけれど、「白餅黑餅」はまだ在庫があるというのでそちらを買って帰った。

フォルムも色も似ているので、黑餅イコール赤福なのかと思っていたら、黑餅には黒糖が入っていた。

白餅は白小豆のあんだ。

どちらもなめらかでおいしい。

交互に食べ比べているとつい食べ過ぎてしまう。

 

整然と並んだ白餅と黑餅

 

「白餅黑餅」について調べたついでに、2個入の「銘々箱」というものがあるのを知った。

これならエレガントに配れるし、ひとりで少しだけ食べるのにも良さそうだ。