ささやかな話

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李忠成のボレーとあの夜の父

李忠成選手が現役引退を発表した。

 

李忠成選手といえばやはり、

2011年のアジア杯決勝、オーストラリア戦で決めたボレーシュートが心に残る。

 

あの夜は実家で試合を見ていた。

 

キックオフが夜中だったので、片づけなどして待っていたら、父の様子がどうもおかしい。

呼吸が苦しそうだった。

前年に肺気胸で二度入院していたので、再発したのかもしれないと思い、救急車を呼ぼうと言ったけれど、

「要らない」「カレーのせいだ」と譲らない。

夕飯にカレーを食べたのだ。

カレーのせいなはずないでしょと言っても、

「俺をしゃべらせるな」「サッカーでも見てろ」と怒られる始末。

理不尽だ。

 

仕方なく、苦しそうな父を気にしながら試合を見た。

ケーヒルキューウェルにやられまくってはらはらした前半。

徐々にペースをつかんで反撃したものの、なかなか決められない後半。

0-0で延長戦になった後半での、あのゴールだった。

涙が出そうなくらい美しかった。

 

翌朝起きると、父は開口一番「病院に行く」と宣言した。

だから昨夜さんざん言ったのに。

やはり肺気胸で、そのまま入院となった。