落語に興味をもったのは、北村薫さんの「円紫さんと私シリーズ」がきっかけだったと思う。
大学受験に失敗して浪人が決まって、時間をもてあましていた頃だ。
人が殺されたりする描写が苦手で、ミステリはあまり読んだことがなかったけれど、「人が死なないミステリ」と紹介されているのを見て、読んでみようかなという気もちになった。
高野文子さんのイラストのすっきりした表紙にも惹かれた。
話の中に出てくる落語は全然わからなかったし、
「高座」を「たかざ」と読んで、「"こうざ"でしょ」と母親に笑われたくらいだけれど、
話はひとつひとつ面白かった。
日常のささいなことから始まって、でも終わり方は鋭く、隙をつかれたような気もちになる。
読んでいて、冬の空気の冷たさや、真夏の夜の静けさが伝わってくる。
落語家の円紫さんの人柄がまた良い。
小春日和のようにうららかで、しかも恐ろしいほどの観察力と記憶力を持っている。
電子書籍化されていないかなと検索していて、
コミカライズされているのを知って嬉しかった。
タナカミホさんの𝕏(Twitter)でも1話読めるようになっている。
偶然立ち寄った紅茶専門店で目に留まった三人組の客。運ばれた紅茶に7杯も8杯も砂糖を入れる理由とは…?(1/13)#空飛ぶ馬 #砂糖合戦 pic.twitter.com/BeApLVWJ4J
— タナカミホ (@tanakatta) 2021年5月2日
いま読み返すと、スマホもネットもない時代ならではのタイムラグやもどかしさがまた楽しい。
ちなみに、こちらの円紫さんは、自分の中のイメージよりもシュッとしている。
その後、自分は無事に大学に合格して、一般教養の落語の授業を取ったのがきっかけで、寄席や落語会に足を運ぶようになる。