この時期の個人的な恒例行事として、落語を聞きにいくというのがある。
国立演芸場の8月中席。
桂歌丸師匠が長年トリを取っていた興行だ。
はじめて行ったのはどういうきっかけだったのかもう覚えていないけれど、
ちょうど歌丸師匠の誕生日の8月14日だった。
出演者さんが舞台にケーキを運んできて、客席も一緒に「ハッピーバースデー」を歌って、みんなでお祝いをしたその空気があたたかくて、
それ以来なるべく毎年8月14日に行くようにしていた。
あの細い体で、晩年には酸素チューブをつけて高座にあがる姿が、見ていて心配でもあったけれど、
噺が終わる頃にはいつも、ただ、すごいなという思いにさせられていた。
歌丸師匠が亡くなって、その後を引き継いだのが三遊亭円楽師匠。
去年は脳梗塞の後の高座復帰だったので、トリではなかったけれど、
車椅子にすわったまま20分ほど漫談(主に歌丸師匠の悪口)をしていた。
出演者さんと、楽屋に挨拶に来ていた方もみんな舞台に呼んで、
「歌丸師匠が生きていれば86です」と「ハッピーバースデー」を歌った後に、
「お盆だから」とお経をあげはじめたのがおかしくて、笑いながら泣いてしまった。
このまま回復して、また次の年から8月中席のトリを取るとばかり思っていた。
今年の8月14日のトリは三遊亭小遊三師匠。
「厩火事」のお崎さんが愛嬌たっぷりでかわいらしい。
国立演芸場は建て替えのためもうすぐ閉場する。
再開場は2029年か、もっと長くかかるかもしれないとのことで、
「あたしはその頃にはもうやってないですけどね」
と笑っていたけれど、どうかお元気でいてほしいなと思う。
その頃に自分が何をしているのかさっぱり想像もつかないけれど、
変わらず落語を聞きにいっていると良いなとも思う。